「我輩は狸である」
「新学期早々何言っているの?」

 人の改心の出来に早くも口を挟んでくるのは中等部からの付き合いの武嶋蔦子さん。入学式だと言うのに愛用のカメラでひたすら撮影を続けるメガネっ子です。

「え、せっかく高等部に上がったんだからちゃんとした自己紹介をしようと思って色々と検討中なんだけど」
「少なくとも今のは止めた方がいいよ」
「そうかな〜?」

 正直今の出だしは改心の出来だったから残念で仕方ない。そうなると他の方法を考えないと。

「それよりさっきから撮影ばかりしているけど、恐れ多くも上級生まで撮影してないよね?」
「そんなの気にするわけ無いでしょ。むしろせっかく高等部に上がって堂々と上級生のお姉さま方の撮影が出来るんだからここで出し惜しみはしないわ!」
「あ、はははは。蔦子さん、程々にね」

 堂々と撮影が出来ると言っているが、実際のところ既に何度か高等部に忍び込んでは撮影に勤しんでいるので私からすれば今更な気がして仕方ない。

「じゃあひとまず撮影はこの辺にして、そろそろクラス発表でも見に行きましょうか」
「まさかとは思うけど蔦子さん、クラスの確認が済んだらまた撮影を再開するとか言わないよね?」
「当然再開するに決まってるわ。まだフィルムの予備はあるんだから」

 おいおい、予備のフィルム3つ分も今日中に使い切る気かい!と心の中で突っ込みを入れながら新しいクラスの確認をしに行く。

「どうやら今年も同じクラスのようね」
「あと桂さんも一緒のようだよ。後は………あ、志摩子さんも一緒なんだ」
「中々粒揃いのクラスのようね」

 中等部からリリアンに入学した志摩子さんは女の私から見ても美人だからちょっと萎縮しちゃう。まぁ気にしているのは私だけで志摩子さんは私なんか眼中にないんだろうな………自分で言ってて自爆もいいところだけど。

「まぁ心配しなくても私の一番の被写体は祐巳さんだから安心していいよ」
「それの何を安心しろって言うのよ」

 そうそう、言い忘れてました。私の名前は福沢祐巳、今日から鼻も恥らう女子高生に仲間入りです。

「祐巳さん、祐巳さん、花の字が違うよ」

 ………ちょっとボケボケなところもあるけど、元気と子ダヌキのような愛嬌がウリの女子高生なんです。







 合縁奇縁 第三話







 ―――事の始まりは入学式の直前でした。私の忠告に耳を傾けれないほど撮影に熱中してた蔦子さんがようやく撮影を終えた時には入学式が始まる直前だったのです。

「祐巳さん、急がないと間に合わないわよ」
「ちょっと待ってよ。元を糺せば時間ぎりぎりになるまで撮影に夢中にならなければこんなに急がなくても良かったんだからね」
「でも今は理由を追求するより早くお聖堂前に行く事が最優先よ」

 蔦子さんに付き合ってた所為で私まで入学式に後れそうになる始末、なのに蔦子さんったら先々行くんだから。

「とにかく急いだ急いだ。新学期早々遅刻して上級生に悪い意味で印象を持たれたいの?」

 それは困る、私なんかに素敵なお姉さまが持てるとは思わないけど進んで悪評を作ろうとは思わない。蔦子さんの言う通り今はとにかく急いだ方が身の為だろう。

「もう、待ってよ」

 お聖堂に向かう途中のT字路を右に曲がる瞬間、蔦子さんが何か声を上げてたけどよく聞き取れなかった。と言うよりそんなこと考えている余裕なんて私にはなく、蔦子さんの後を追うことで精一杯だった。そしてそれこそが失態だった。

「す、すいませんでした!」
「ふぅ、危なかっ……うわっ!」

 ん?蔦子さん以外の声がする、誰だろう………と思った矢先だった。

「ギャッ!!」

 急に視界が真っ暗になったと思ったら、視界を覆い隠した何かにぶつかりそのまま押し倒す形になった。

「アイタタタ……」

(いくら急いでいるからって初日から曲がり角で衝突だなんて失敗したな〜。あ、でも漫画とかだとこれがきっかけで恋の花咲くワンシーンよね。咲いた、咲いたチューリップの花が♪………そう言えばリリアンの学生会は山百合会って言うからチューリップより山百合の方がいいかな?って、それ以前に女子校で恋の花が咲くわけないか)

「ちょっと二人とも大丈夫なの?」

 横から祐巳と共に倒れた者を心配する声で我に返る。見れば祐巳の下には同じ制服を着込んだ学生が………

(え〜と、最初蔦子さんが何か叫んでいたのはこの人たちとぶつかりそうになったのが原因で、その時は難を逃したのに後を追うように来た私とぶつかって今に至ると………)

「はっ!?すすすすすいません!!」
「私は大丈夫だからそこまで気にしなくていいよ」

 どうやらあの時ぶつかった相手が今下にいる彼女で、ぶつかり押し倒しておきながらボケボケな想像を延々と続けていたのだ。私は失態のあまり、穴があったら入りたい心境である。

「何よりこっちにも非があるのだからここはお相子でいいでしょ。それよりそろそろ降りてくれないかな」
「はうっ!もももももももも申し訳ありません!!」

 ボケボケな想像に浸り続けるだけじゃなく、いつまでも彼女の上に乗ったままだと言うことに気付いて慌てて再度頭を下げる。ただし未だに彼女の上に乗ったまま、である。

「いや、だから早く降りてあげた方がいいって」
「し、ししししし失礼しました!!」
「すいません、私も彼女も急いでいたもので……って、あっ!?」

 慌てて彼女の上から降りる私の代わって蔦子さんがお詫びを言おうとして、その表情が固まる。蔦子さんの知り合いなのだろうか?

「だからそこまで気にしなくていいよ、別に怪我をしたわけではないしね。ところで君達こそ怪我はなかったかい?」
「私は大丈夫です。それより……」
「あ、私も大丈夫です。先ほどはご迷惑をお掛けして……」
「だからそれはもういいって。それより……」

 先ほどまでは押し倒した相手が同じ学生の身である事しか確認が取れなかったが、お互い体制を直した事で相手の顔をようやく目にすることが出来た。

(うわぁ、まるで宝塚だーーー!)

 背が高くボーイッシュな美貌を持つその女性は、以前TVで見た宝塚トップスターさながらの姿で思わず見惚れてしまう。

「あの、私一年桃組の福沢祐巳と言います。あの、その、……」

 何を言えばいいのか、何を言いたかったのか頭の中が真っ白になってちっとも要領を得ない。でも少なくとも自己紹介だけでもちゃんと出来ただけでも自分を褒めてあげたい。

(って、思い出した!そんな呑気な事言っている場合じゃなかったんだ!!)

「あ、あの、そろそろお聖堂に向かいませんか。私が言うのもあれですけど高校生活初日から遅刻してしまったら目も当てられないし」

 もう直ぐで入学式が始まると言うのにこんな所で時間を潰してる余裕なんて私たちには無いのだ。実際蔦子さんももの凄く焦った顔をしているし………

「そ、そうだね。確かに急がないと………」

 えーと、ここからお聖堂までの時間を考えたら急げばまだ間に合うよね。入学式初日から遅刻して上級生のお姉さま方に情けない姿を晒すわけにはいないよね。あ、上級生のお姉さま方と言えば………

「そういえば入学式に山百合会の方々が来ているって聞いたけど、どんな方なんだろう?」
「それは勿論このリリアンを代表する薔薇さまである以上、それはもう素晴らしい方に決まってますわ。私も早くお目にしたいわ」

 ふと浮かんだ疑問にヘアバンドを付けたもう一人の女性が応えてくれた。

「お、おね___」
「令さんもそう思いますよね?」
「そ、そうですね」

 以外にも第一印象では凛々しい女性だと思ってた彼女も連れの彼女の前では随分と弱腰、確かに彼女はどこか他の人には無い威厳のようなものが醸し出している。やっぱり何か人より秀でている物を持つ特別な人間の交友関係は、同じように特別な人間と付き合うものなのかもしれない。

「それより祐巳さんたちはそろそろお聖堂に向かわれないと入学式に間に合いませんよ?」

 いけないいけない、つい話しが脱線してしまった。これでは本当に急がないと間に合わなくなってしまう。

「そ、そうですね。あ、でも………」
「私たちのことは気にしなくてもいいわ。どうも令さんは昨日遅くまで剣道のお稽古でお疲れのご様子、ですから彼女には悪いけどこのまま保健室にお連れして休ませようと思いますわ。だから祐巳さんたちは私たちに構わずお先にどうぞ」

(そっか、どこか調子が悪そうだったのは疲れが溜まってたからなんだ。でも大丈夫かな?やっぱり一緒に保健室まで連れて行った方が………)

 だが入学式にはお父さんたちが見に来ているのに休んだりしたら余計な心配をさせることになってしまう。さすがにそれは不味いと思うし、彼女のご厚意を無視するのも失礼だと思う。結局私は彼女の申し出を受ける形でお聖堂へと向かう。

「あ、私はまだ名乗ってなかったね。私の名前は江利子、鳥居江利子よ。そして彼女は支倉令、もし良かったら私たちの名前を覚えててね」

 ヘアバンドを付けた方が江利子さんで、凛々しい女性が令さんね。入学式が終わったらお見舞いに行ってみようかな?

「ねぇ祐巳さん、もしかして本当に解らなかったの?」
「うん、でもだからって体調が悪いのに手間を取らせちゃって申し訳ないよ」
「駄目だこりゃ。あのね祐巳さん、あの人たちは………」
「って、だから私たちは呑気に話をしている余裕なんて無いんだって!蔦子さん、お先!!」
「あ!ちょっと祐巳さん!!」

(ふーんだ、待ってあげないよ)

 先程置いて行かれた事を根に持っているのか、後ろで蔦子が呼ぶのを無視して更に足を速める。

「祐巳さんにも困ったものね」







          ◇   ◇   ◇







 結局ぎりぎりで間に合った私と蔦子さんは言葉を交わす間も無く番号順に並び、無事入学式に参加することが出来た。

(しかし高等部に上がったからって同じリリアンだからこういう式典にイマイチ感動に欠けるな〜)

 これが受験組みならまだ努力の末入学できた分、達成感も感じることが出来るからマシかもしれない。だが幼稚舎からエスカレート式に上がってきた祐巳にとって入学式そのものは退屈以外なんでもない。せめて薔薇さまたちのお顔でも見れればと思ったが、そもそも薔薇さまたちの顔を知らないので探しようが無い。

(次は新入生代表の挨拶か、確かシスターでもある学園町はリリアンのOGなんだっけ)

 そして学園長が新入生代の前に出た時だった。

「ねぇ、あの学園長に連れ添っているのって黄薔薇さまじゃない?」
「ええ、確かにあの方は黄薔薇さまですわね」

(ちょっとちょっと、入学式の中なんだからキョロキョロしたら不味いよ)

 だけど私も黄薔薇さまがどんな方なのか興味があるのでつい目が行ってしまう。

(確か学園長に連れ添っている女性よね。えーと………あれかな?でもどこかで見たような………)

 セミロングのヘアスタイル、そしてそれをヘアバンドで止めた姿、それはまるで先程会った江利子さんのように見え___

「って、え__はぐっ!?」

 思わず叫び声をあげそうになった私の口を器用にも、別の列にいたはずの蔦子さんが塞いでくれる。

「祐巳さん、落ち着いて。いいね?」

 首を上下に振り口を塞いでいた手を外してもらう。幸いにも周囲から注目を浴びるものの、式典そのもを中断するほどじゃなかったのが唯一の救いである。

「蔦子さんは知ってたの?」
「だからそれを言おうとしてたのに祐巳さんが聞こうとしなかったんじゃないの」

 つまりあの時ぶつかった相手と一緒にいたのが黄薔薇さまで、その事を知らなかったのは私だけと言うことになる。

「付け加えて言うと祐巳さんがぶつかった相手は黄薔薇のつぼみ、つまり黄薔薇さまの妹で私たちより一つ上の上級生よ」
「っ!?」

 もはや穴があれば入りたいと言うレベルの話しではない。穴を掘り続けて地球の裏側まで逃げてしまいたい心境である。

(全校生徒の憧れの的である薔薇さまたちの一人に対してタメ口、しかも黄薔薇のつぼみにまで………)

「多分黄薔薇さまがこの事を根に持つと言うことは無いと思うよ。でももしこの事を他の人が聞いたらどんな顰蹙を買うか解ったものじゃないから迂闊に話さない方が身の為よ。って祐巳さん、聞いてる?」
「………………」

 ここから先の記憶は何一つ覚えてなかった。何でも入学式が終わった後、呆然とする私を蔦子さんが引っ張って教室まで運んでくれたそうだ。せめて入学式が終わった辺りで意識が戻れば直ぐにでも黄薔薇姉妹に謝りに行けたのだが、さすがにこの時間帯ではいたとしても薔薇の館、いくらなんでも入学初日に薔薇の館に訪問する度胸は私には無い。

「まぁ明日の登校時に謝りに行けばいいと思うよ」
「そうするしかないよね」

 なんにしろ、あれだけ考えていた自己紹介を披露する機会を私は逃してしまったのだった………







          ◇   ◇   ◇







「じゃあ祐巳さん、本当に私が付いてなくても大丈夫なのね?」
「大丈夫じゃないけど大丈夫」
「どっちなのよ?」
「自信は無いけどやるしかないって事、じゃあ粉骨砕身の覚悟でアタックしてくるね」
「せいぜい当たって玉砕しないようにね」

 あまり有り難味のない声援を受けながら校門をくぐり抜けて行く。目指すは黄薔薇のつぼみ、事前に来ていた蔦子さんからの情報で先程令さまが来たと言っているから今頃マリア像の辺りだろう。

(当たって玉砕か、相手が剣道の有段者だから私の場合当たって玉砕というより当たる前に叩き落されそうな気が………)

 変な想像をしたはいいが返って自信が無くなっていく。とは言え現時点なら他の薔薇ファミリーの方々がいないから話しはし易いはず、むしろこれを逃すとますます言い辛くなってしまう。もはや悩むより当たって砕けろ、である。

(だから砕けたら不味いんだって)

 少し足を速めていくとようやく令さまの姿を見つけることが出来た。どこか覇気が無い気がしたがまずは声を掛けてみよう。砕けるのはそれからでも遅くは無いはず。

「ごっ、ごきげんよう!令さま!」
「あぁ、ごきげんよう」
「あ、あの、先日は知らなかったとは言えとんだご無礼を!ご、ごめんなさい!」
「え?」

 よし、多少どもったけど言いたいことはちゃんと言えた。でも令さまは不意を突かれる形になったから一瞬誰か解らなかったようだ。

「君は確か………」
「はい、一年桃組の福沢祐巳です。その先日は………」
「あぁ、それはさっき言ってたよね。それにアレは黙っていた私やお姉さまが原因なんだから気にしなくてもいいよ。むしろ私の方こそ謝らせてよ」
「え、えぇぇぇ!?で、でも………」

 事情はどうであれ、仮にも黄薔薇のつぼみである令さまが一介の新入生に謝るなどということがあっていいのだろうか?いや、良くない。令さまのような人気のあるであろう上級生から頭を下げられた事を知られたら有名人になること間違いなしだろう。ただしそれは決して喜ばしい評判でないのは間違いない。

「私のお姉さまが迷惑をかけたことと、それを止めれなかったこと、本当にごめんね」
「あ、ああああああああああの、頭を上げてください。幼稚舎の頃からリリアンにいるのに黄薔薇さまや黄薔薇のつぼみである令さまのことを知らない自分が非常識なだけなんですから。それに私にもう少し落ち着きがあって、入学式の最中に大声出すなんてヘマをしなければ良かっただけなんですし」
「まぁ確かに入学式の最中に大声を出すのは関心しないけどね」
「ごめんなさい………」

(はぁ、やっぱりあの事も気付いていたんですね。クラス中だけじゃなく山百合会の方々にまで知れ渡っているなんて………)

 やはりあれはリリアンの生徒にあるまじき行為なのだと改めて痛感させられる。まさか初日からここまで駄目駄目路線まっしぐらだといい加減涙が出そうだ。

「いや、だから責めている訳じゃないよ。そもそも頭を下げているのは私の方なんだから。まぁお互い今後は共に気を付けていこうって事よ」

 何となく令さまが私をからかっていたことには気付いたけど、私にその事を責めることは出来なかった。何せ元々ミーハーなところのある私がこれまでの失態を前に言い返すことなど出来るわけが無い。

「ま、まぁその話はもう良いでしょう。それより祐巳ちゃんは高等部に上がって、何か入りたい部活とかあるの?」
「わ、私ですか。恥ずかしながら特にこれと言ってやりたい事は………そもそも私は何をやっても人並みが関の山ですし………」
「あら令、早くも剣道部の勧誘かしら?」
「お、お姉さま!?」
「黄薔薇さま!?」
「「ご、ごきげんよう」」

 突然黄薔薇さまが出てくるので驚いてしまい、挨拶が遅れてしまう。

「二人ともごきげんよう。確か祐巳ちゃんだったね、今日は蔦子さんとは一緒じゃないのね?」
「え、ええ、多分今頃マリア像の付近で写真撮影に勤しんでいると思います」
「なるほどね、彼女らしいわ」

 あの時名前以外紹介し合わなかったと言うのに、早くも蔦子さんのイメージが定着している………まぁ間違った認識じゃないから問題はないけどね。

「昨日はあの後会うことは出来なかったけど入学式は楽しんでもらえたかしら?」
「あ、あれの何を楽しめと言うんですか?」
「新しい出会い、そしてその人物が実は………と来るのが漫画の王道じゃないかしら?」
「それはそうですけどお陰で私は恥をかいたんですよ」

 何故だろう?私をからかおうとする点では令さまと同じでも、黄薔薇さまの場合は令さまの時と違って文句の一つや二つでも言わないと気がすまないぐらいイライラしている。

「だから言ったでしょ。私たちの名前を覚えててね、って」
「〜〜〜〜〜っ!」

 少し解った気がする。黄薔薇さまはこういう人なのだと、人をからかう事が楽しみな苛めっ子タイプだと言うことが。とは言え相手は黄薔薇さま、迂闊なことは言えない。

「せっかくだからついでに聞くけど紅薔薇さまの名前ぐらいは知っているよね?」
「え〜と、確か祥子さま?」
「ぷっ、それは紅薔薇つぼみよ。紅薔薇さまの名前は蓉子よ。これで一つ偉くなったわね」
「ロ、黄薔薇さま!!」

 私にだって我慢の限界と言うものがあります。いくら相手が黄薔薇さまであってもこれ以上自分を抑えれそうに無い、そう思った矢先でした。

「お姉さま、あんまり苛めては祐巳ちゃんが可愛そうですよ。祐巳ちゃんも落ち着いて、お姉さまも悪気が………無かったとは言えないけどそこまで悪い人じゃないから」

 やはり悪気はあったんですか!と突っ込みを入れたいけど多分それをやっても喜ばせるだけなんだろうし、令さまを押しのけてまで文句を言えるほどの度胸は持ち合わしてない。結局渋々引き下がろうとした時、黄薔薇さまが急にシリアスな顔になるので思わず身構えてしまう。

「じゃあ最後にちゃんとしたアドバイス、この一年間を平穏に過ごしたければ白薔薇さまには関わらないほうが身の為よ。もし白薔薇さまの目に留まった日には祐巳ちゃん、きっと一年間白薔薇さまのおもちゃにされるわよ」
「今と対して変わらないんじゃあ………」
「甘い、甘いわ祐巳ちゃん!白薔薇さまはあなたが思っている以上の人よ。はっきり言って私に捕まるより厄介よ」
「え、ええええええええええええ!?れ、令さま、これも何かの冗談ですよね?」

 黄薔薇さま一人ですらここまで振り回されているのだ。黄薔薇さまがご自身より厄介とされる白薔薇さまに捕まったりしたら………考えただけでもゾッとする話である。藁をも縋る思いで令さまに否定してもらおうと願うが、令さまは何も答えず視線すら合わしてくれなかった。

「もしかしたら学園だけでは飽き足らずそのまま家までお持ち帰りするかも………」
「令さまも黙っていないで否定してくださいよーーー!」

 マリア様、私に平穏な学園生活と言うのは夢のまた夢なのでしょうか?







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