「ゴメンなさい」
「だからもういいって、家の用事なら仕方ないよ」

 前日になって約束をキャンセルする事になって本当に申し訳ないと思っている志摩子は、乃梨子が気にしてないと言っても不甲斐無い自身に納得できないでいた。

「でもせっかくの連休なのに………」

 他の学校と違い土曜も学校があるリリアンの学生には月曜が祝日となる今度の連休は長期休暇の次に貴重な連休なのだ。そして白薔薇姉妹は泊りがけは無理でもこの二日間で教会や仏像展をまわるつもりだったのだ。だがそれも家の都合で行けなくなったのだ。

「もう、連休なんてこれから先もあるし、デートを楽しみにする日が増えたと思えば………」
「駄目ね、お姉さまなのに乃梨子に気を使わせてばかりで………」
「〜〜〜〜っ」

 先ほどからずっとこの様子なのだ。乃梨子にはデートが台無しになったことよりも志摩子が自己嫌悪に陥っている方が辛いのだがそれが志摩子には分からないようである。

「ねぇ志摩子さん、何も一時期の紅薔薇さまと祐巳さまじゃないんだからこの位で愛想尽かしたりしないって」
「でも塵も積もれば山となると言う言葉もあるし、乃梨子って私にはあまり我侭を言ってくれないから溜め込むかもしれないし………」
「もう、志摩子さん!少しは自分の妹を信じてよ」
「まぁまぁ、志摩子さんも落ち着いて。乃梨子ちゃんが別の意味で困っているよ」

 不毛なやり取りを延々と続ける二人を放って置けなくなった祐巳と由乃が間に割って入る。

「ねぇ、結局の所志摩子さんはどうしたいの?」
「それは………そう言えばどうしたいのかしら?」

 申し訳ない気持ちで頭が一杯だった為結局どうしたいのかまで考えていなかったのだ。

「やっぱりというか、志摩子さんらしいというか………ほんと乃梨子ちゃんのことになると冷静さを無くすね。出来立てホヤホヤの姉妹ってこういうものなのかな?」
「私に聞かれてもお姉さまとしての立場は未経験だからよく分からないよ」
「それもそうね。未だに妹をもてないでいる出遅れた私たちには分からない惚気よね」
「だね〜」
「二人ともあまり苛めないで欲しいわ。それに祐巳さんと由乃さんにはお姉さまがいるじゃない」

 二人にからかわれて頬を膨らませ拗ねる志摩子に『も、萌え………』という声や『ゴクッ!』と息を呑む音がする。もし去年から志摩子がこんな表情を見せていたのなら白薔薇姉妹の付き合い方は大きく変わっていただろう。

「………と、いけないいけない。危うく道を踏み外す所だったわ」
「そ、そうね。それより志摩子さん、ようは志摩子さんとしては予定をドタキャンされた乃梨子ちゃんをどうにかしたいのよね?」
「え、ええ」
「だったら私たちが代わりに乃梨子ちゃんたちの相手をしようか?私たちも今度の連休はお姉さまとのデートだけどは志摩子さんたちと違って一日だけだし、由乃さんたちとはデートの日が違う」
「え?」
「だから日替わりで私と祐巳さんで乃梨子ちゃんの相手をすれば退屈させないで済むよ」
「ちょ、ちょっと………」
「それはいい考えね♪」
「し、志摩子さん!?」

 急な展開に頭が混乱しそうだが要約するとドタキャンされた乃梨子の為に日替わりで祐巳と由乃がデートの相手になるというのだ。しかも志摩子もそれに賛同しているというのだから乃梨子は混乱する頭を必死にまとめ反論を述べる。

「別にお二方の手を煩わせなくとも私は平気ですし、その事で志摩子さんとどうにかなる事はないです」
「ちなみに祐巳さんと由乃さんはどこに行くの?」
「そうだね、今の所………まぁ土産話楽しみにしてて」
「あの、もしもし?」

 だが乃梨子の叫びを聞き入れる者はいなく、志摩子たちの中でデートは確定済みとして話が進んでいた。

「乃梨子ちゃん、明日と明後日は10時に駅前で待ち合わせね」
「私の分まで楽しんできてね」
「そ、そんな………」

 乃梨子を見送るように笑顔を浮かべる志摩子と口元に笑みを浮かべる祐巳と由乃を前に不安を感じる乃梨子だった………







          ◇   ◇   ◇







「遅い………」

 約束の時間は既に十分以上経っているにも拘らず、未だに由乃は来る様子がなかった。

「自分でこの時間を指定しながらなんで時間通りに来れないかな」

 本当なら志摩子とデートをするはずだった土曜日、乃梨子のデートの相手は志摩子から由乃に代わっていた。だが百歩譲ってそれは良しとしよう。だがそうなると遅刻、そして皮肉にも志摩子とのデートの為に用意した服で御粧しした姿だった為ナンパにまで遭う始末。当然機嫌が悪くなるのも無理も無いだろう。

「ごめーん、ちょっと遅くなっちゃった」
「遅過ぎです!!」

 なので出会い頭に声を荒げるのは当然の成り行きと言うもの。だが由乃は、

「ちょっと乃梨子ちゃん、そこは『ううん、私も今来たところです』って言うのが女の愛嬌ってものでしょう」
「何で私が由乃さまに愛嬌を振りまかないといけないんですか!一体いつ私たちはそういう関係になったんですか!!」
「え〜、だって私の為に精一杯御粧ししてくれたんでしょう?」
「ち、違います。これは元々志摩子さんとのデートの為に用意した服で、他に適当な服が無かったから………」
「はいはい、そういうことにしてあげるわ。それより早く行こうか」
「そういうことも何も………」

 完全に由乃のペースに流されいいようにあしらわれてしまう。結局これ以上反論した所で墓穴を掘るのが目に見えているので素直に由乃の後を追い始める。

「ねぇ、乃梨子ちゃんはボーリングしたことある?」
「ボーリングですか、以前家族で一回行っただけです」

 何せ当時中学生の数少ないお小遣いの殆どが趣味である仏像鑑賞に使われ、カラオケやボーリングといったアミューズメント系に注ぎ込む余裕など無かったのだ。

「あの、もしかしてボーリングに行くつもりですか?私あまり得意ではないんですけど」
「なおさら好都合ね♪」

 不敵な笑みを浮かべる由乃に一抹の不安を感じる乃梨子ではあったが、いざ1ゲーム終ってみると

「じゃあ2ゲーム目いくよ」
「あの、もしかして手加減してくれているのですか?」
「私がそんなことするわけないじゃない。勝負事は常に全力投球、まぁこれは祥子さまにも言えることだけどね」
「は、はぁ………」

 何せ乃梨子の成績は86、由乃に至っては78である。両者共にストライクはおろかスペアすら出ていないのだ。

「見てなさい、次こそはストライクの一つや二つ出してみせるわ」
「そんなこと言ってるとガーター出すんじゃないんですか?」
「そんなわけある訳ないでしょ………って、あーーーーーーー!!」

 行っている傍からボールは左に大きく逸れ溝にきっちり嵌り、ピンの横を虚しく転げて行く。

「もう、乃梨子ちゃんが余計なこと言うから本当にガーターになったじゃない」
「人の所為にするなんて大人気ないですよ」
「〜〜〜っ、まぁいいわ。一回や二回ガーターになったからってどうってこと無いわ。見てなさいよ、えいっ!」

 今度は右に逸れたものの、途中左に曲がり一つまた一つとピンが連鎖的に倒れ

「ほらストライクよ、ストライク!」
「由乃さま、この場合スペアです」
「え?全部倒したのよ、ストライクでしょう」
「これが一投目であればストライクでしたが生憎二投目、この場合一度に全部倒してもスペアです」
「な、何ですって!?」

 ストライクでない事に悔しがる由乃ではあったが、実の所乃梨子も内心穏やかではない。

(スペアとは言え私も今まで一度も出なかったのに………もし次の一投目でガーターが出なかったらプラス10点加算されてしまう)

 ストライクを出さないと納得しない由乃と違い、冷静にスコアの計算をする乃梨子はこれがあまり落ち着いていられる状況でないことに気付いるのだ。

「神様仏様志摩子さん、この一投にどうか御加護を………えいっ!」

 由乃と違いボールは真っ直ぐに、そして勢いよくピンを弾き

「嘘っ!」
「やった!」

 見事ストライクを決めることに成功する。

「これで由乃さまは次の一投目に10点加算され、私は一投目と二投目の合計に10点加算ですね♪」
「な、何ですってーーーー!!」

 だが二人のピークはこのフレームのみだった。後はよく言えば接戦、悪く言えばどんぐりの背比べ。低レベルの争いだった。

「とりあえず総合計では私の方が2点上ね」
「たった2点じゃないですか。1ゲームと2ゲームは私の勝ち、つまり二勝一敗で私の勝ちです」
「………………」
「………………」
「「次の勝負で決着つけるわ!!」」

 その後昼食も忘れてカラオケで張り合い、

『私は歌うより演奏する方が得意』

 と声が出ればゲームセンターで楽器を使ったゲームに移行し、

『やっぱり出来る女は音楽も当然だけど頭の大事よね』

 と声が出ればパズルゲームを始め、気が付けば両者共に当初予定していた額を遥かに超える出費になってしまう。

「と、とりあえず私の家でお茶にしない?」
「そ、そうですね」

 由乃はまさかお店に行く余裕が無いとはよう言えず、乃梨子もまた明日の事を考えたらとてもお店に行こうとはとても言えなかった。

「はい、乃梨子ちゃんは確か砂糖は控え目だったよね」
「あ、どうも………って、私の好みって言ってないですよね」
「何も昨日今日の付き合いって訳じゃないでしょう。その位気付いても不思議は無いでしょう」
「は、はぁ………あ、美味しいです」
「それはどうも、でもインスタントよ」

 そうは言うが、乃梨子の姉である志摩子ですらここまで見事な匙加減は出来ないのだ。そんな由乃にどこか不思議な気持ちを抱いてしまう。

「ん〜〜〜、それにしても久しぶりにボーリングすると結構萌えるね」
「あの字が違いますよ………じゃなくて、黄薔薇さまとは行かないんですか?」
「令ちゃんとボーリング?薔薇姉妹の対抗試合という形ならともかく、二人で行ったところで令ちゃんの圧勝か変に気を利かして最低の泥仕合になるかのどっちかじゃない。それで楽しめると思う?」
「はぁ、まぁ分からないではないですが」

 ちなみに同級生である祐巳と志摩子は大きな差ではないものの、由乃より上だったそうだ。

「乃梨子ちゃんにはあまり面白くないかもしれないけど、私にとって一番ボーリングを楽しめる相手は乃梨子ちゃんってわけ」
「………まぁ良いですけどね」

 不貞腐れたような顔をするものの乃梨子にとってもあのボーリングは十分過ぎるくらい楽しめた。だが、

(じゃあその後のカラオケとかは楽しく無かったって言うのかな)

「またボーリングに行きたいね」
「出費が痛いです」
「デートに出費を気にするなんて野暮よ野暮」
「それは黄薔薇さまにでもお願いして下さい」

 その意見には同調できなくも無いが、如何せん乃梨子の趣味は決して安くはすまないのだ。そして趣味を除けば堅実な性格である以上どうしてもそう言う硬い考えを拭い去れないのだ。

「あ〜あ、あそこまで勝負に熱くなれるなんて乃梨子ちゃんだけなのにな」
「え?」
「ボーリングにカラオケ、太鼓にパズルゲーム………どれも拮抗していて楽しかったのに今日限りってちょっと寂しいな」
「………今度はシューティングで共闘してみるのも悪くないと思いませんか?」

 何故か顔が熱くなる、だがその理由まで考えるつもりはなかった。何故か今はそんな野暮な事を考えたくはなかったのだ。







          ◇   ◇   ◇







「ごきげんよう、乃梨子ちゃん。待ったかな?」
「いえ、祐巳さまは時間通りだったので問題ないです」

 翌日先日と同じ場所で待つ乃梨子に祐巳が待ち合わせ時間より若干余裕を持って到着する。

「………由乃さん遅刻しちゃったの?」
「ええ」
「多分明日令さまも言うと思うけどゴメンね、由乃さんは悪気はないと思うのよ。ただちょっと悪戯心が出たというか………」
「もう良いですけどね。それはそうと申し訳ないんですが持ち合わせがあまり………」
「あ、そこは大丈夫よ。ジャーン、遊園地のフリーパス♪」

 どうやら父の取引先からお近付きにと何枚か貰ったようで、これのお陰で実質交通費だけで十分遊べるというのだ。

「多分由乃さんの相手をする以上出費は安くはないだろうなと思ってね」
「仰る通りです。ではせめて交通費くらいは………」
「ふふふ、実はこんな物を持ってたりするんだよね」

 そして取り出したのは未使用のバスカード、確かにこれなら出費はかからないで済むだろう。しかも、

「しかも今日は紅薔薇のつぼみ特製のお弁当付き(+水筒付き)、これなら出費は0よ」
「おーーーーー、確かにこれは助かります」
「じゃあ時間が勿体無いし出発しますか」

 そして向かった遊園地では

「まずはメリーゴーランドは基本よね」
「ゆ、祐巳さま!?」
「乃梨子ちゃんはやっぱり白馬に乗る?」

 と年齢を考えない祐巳に無理矢理メリーゴーランドに乗せられ、

「次はコーヒーカップね」
「ま、まぁメリーゴーランドよりマシですね」
「待ったと言っても回し続けるから覚悟してね」

 とコーヒーカップにのるものの

「ゴメン、ちょっと休憩しようか」
「調子に乗って馬鹿みたいに回すから………」
「うぅ〜、こんなつもりじゃなかったんだけどね」

 と勝手に酔い潰れた祐巳の面倒を見たり、

「怖かったら志摩子さんの代わりに抱きついていいよ」
「心配しなくてもこんな子供騙しで怖がりません」
「またまた、強がっちゃって」

 と言う祐巳に案の定、

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「祐巳さま、ただのコンニャクですよ」
「うらめしや〜」
「ひぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!」
「〜〜〜〜っ」

 逆に怖がり抱きつく祐巳を宥めたりする始末。だが、

(祐巳さまって結構ふくやかな………って、女同士なのに何考えているの!?)

 と密かにドキマギしたのはここだけの話しである。そして昼食では

「ジャーン、どうかな?」
「思ったより美味しそうですね」
「それって私が料理下手って事?」
「そ、そんな事ないですって。考え過ぎですよ」

 試しにから揚げを一口食べてみると、至高の味わいとは言わないまでも慣れ親しんだ好みの味が口の中に広がる。

「あ、このから揚げ好みかも」
「は、ははは。そうよね、冷凍食品だから外れじゃないよね」
「え、えーと、今度は玉子焼きを頂こうっと………う、ちょっと甘過ぎかも」
「ガーーーーーン!!」

 もっともこれは好みの問題なので問題なく食べれる範囲内なのだが、

「うぅ、上級生の威厳形無しだよ〜」

(面白そうなのでもう少し黙っておこう)

 何故紅薔薇のつぼみが学年を問わず人気なのかが何となく理解できた乃梨子は、嗜虐心が刺激され食事中ずっと祐巳をからかっていた。

「楽しい昼食でしたね祐巳さま」
「そ、そうだね。次は何しようか」
「そう言えばまだジェットコースターの類はまだですよね」
「うっ!!そ、それは………ほら、食べて直ぐにジェットコースターに乗るとお腹に良くないでしょう」
「もしかして怖いとか?」

 妙にソワソワする祐巳がジェットコースターのような絶叫系が苦手であるのは容易に想像が付く。これは何としてでもジェットコースターに乗せないと、と思う乃梨子は祐巳を挑発してみる。

「そ、そんなことある訳ないでしょう。そこまで言うならジェットコースターの一つや二つ軽くこなしてみせるわ」

 案の定直ぐに喰らいついた祐巳に内心ほくそ笑むが乃梨子は直ぐに後悔する事になる。

「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「ゆ、祐巳さま、声が、声が………」
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」

 割と平然とジェットコースターを降りた祐巳と違い、乃梨子はフラフラした足取りでベンチに腰を下ろす。

「やっぱり声大きかった?」
「え、えぇ。これでもかって言う位大きかったです。今でも耳鳴りが………」

 どうも祐巳は絶叫系自体は苦手ではないのだが、絶叫系に乗った時の声のトーンが半端でない位酷く、祐麒から乗る時は一人で乗るよう忠告されていたのだ。

「じゃあ次はあの回転式の絶叫マシーンに行って見るけど乃梨子ちゃんはどうする?」
「今回は見送らせて………」
「………………」

(そ、そんな小動物のようなつぶらな瞳で見ないで下さい。断れないじゃないですか)

 不祥事を起こし最近は見かけなくなった某消費者金融のCMの父親の心境が嫌と言うほど理解できる。『どうする?』と問いかけられた所で答えは一つしかないのだ。

「せっかくのフリーパスですし、最後まで付き合いますよ」
「やった♪」

 乃梨子がノッてくれたのが嬉しかったのか、祐巳は乃梨子の手を握りそのまま駆け出す。

「ゆ、祐巳さま、何も走らなくても………」
「『時は金なり』よ。それにお姉さまの性格を考えたら絶叫系なんて絶対一緒に乗れないだろうからね、乃梨子ちゃんがこうして付き合ってくれるのは凄く嬉しいよ」
「そ、それはどうも」

 本当は手を握られている事を指摘したかったのだが、満面の笑みを浮かべる祐巳を前にこれ以上何も言えなくなってしまう。

(ゴメンね瞳子、可南子さん)

 何となくこの手を離す気になれず、気付けばデートが終るまでの間手を握っていない時間の方が少なかったのだ。







          ◇   ◇   ◇







「と言うわけでオーディションよ、妹オーディション!」
「オーディションって由乃さん、いくらなんでもそれはちょっと………」

 未だに妹が出来ない事に焦りを感じる由乃が思いついた奇想天外の策に祐巳は思いっきり引いてしまう。だがこの案に納得できないでいるのは祐巳だけではなかった。だが

(まぁ、どうせまともに相手にはされないよね)

 と高を括っていたのでこの話しは直ぐに流されると判断していた。

「出逢いの形はどうであれ、大事なのはそれから先でしょう?」
「そうね由乃さんは昔からの幼馴染で姉妹になるのは暗黙の了解、祐巳さんに至っては祥子さまは寝ぼけてその時の事を覚えてなかったのよね」

 なのに出逢いがドラマチックではなくとも十分姉妹としてやっていけていると志摩子がフォローを入れるものだから状況は宜しくない方へ流れていく。

「色々と紆余曲折あったけど二人とも仲の良い姉妹でしょう?だったらオーディションも一つの手かもしれないわ」
「し、志摩子さんまで………」
「あら、妹オーディションとは面白そうね。祐巳、貴女も混ぜてもらいなさい」

 そして祥子がオーディションに賛同するどころか祐巳も巻き込む始末、途中由乃の異論や祐巳が反論するものの簡単に一蹴されてしまう。

「とにかく二人には妹オーディションに出てもらうわ。まぁ元々由乃ちゃんの発案だから反論はないわよね」
「ちょっと待って下さい、紅薔薇さま。そもそもオーディションまでして無理矢理妹を作らなくてもいいじゃないですか」

 いい加減旗色が悪くなったので乃梨子自ら反論を述べ始める。

「あら乃梨子ちゃん、お家騒動に他藩が口出ししないのが礼儀と言うものよ」
「その割にはマリア祭やその後も私たちにやたらとちょっかいを出している人がいましたよね」
「人の揚げ足を取るのだけは相変わらずのようね」
「思えばああやって人の姉妹問題にはやたらと口出しする割りにご自身の妹を蔑ろにしていたから、いつぞやはこっちに皺寄せが着たんですよね。あの頃は本当に忙しかったな〜」
「乃梨子ちゃん、言って良い事と悪い事があるがあることも分からないのかしら?」
「天下の某財閥のご令嬢が窃盗紛いな事をさせてよくもまぁそんなことが言えますね」

 既に話の論点が大きく逸れているものの、ヒートアップする二人にはもはやどうでもいいこと。売り言葉に買い言葉で罵詈雑言する二人を必死に周りが宥め、結局妹オーディションの事は有耶無耶なまま乃梨子は祐巳と由乃に連れられ薔薇の館を後にする。

「しかし二人の口論って始めてみたけど前もこんな感じだったの?」
「あの時はここまで酷くなかったよ」
「あの、迷惑掛けて申し訳ありません」
「いいのよ、お姉さまのヒステリーを久々に拝ませてもらったと思えば妹的には無問題」
「出た、Mな妹福沢祐巳」

 と、じゃれ合う二人を見てあまり気にしていない事に一安心する。しかし

「ところでどうして乃梨子ちゃんはオーディションに反対だったのかな?」
「うんうん、それは私も気になったな。だって乃梨子ちゃんってオーディションそのものはあまり問題ないように見えたからね。だとしたら何で反対だったのかな?」
「そ、それは………」

 乃梨子自身答えは分かっているし、祐巳と由乃だって分かりきった事。なので改めて言うつもりなんてないし、これ以上この話題には触れて欲しくなかったのだが

「もしかして私たちに妹が出来るのが面白くないとか」
「なっ!?何でそうなるんですか!!」
「へ〜、じゃあ私たちに妹が出来るのは問題ないんだ。そうよね、乃梨子ちゃんには志摩子さんがいるんだし」
「だから私たちが今後乃梨子ちゃん以外の下級生とデートしても問題ないよね?」
「………ちょっと嫌です」

 ここまで言われてはもはや乃梨子の負けである。

「ん?何か言った?」
「えぇ、嫌ですよ。嫌ですとも!祐巳さまや由乃さまが私以外の人とデートするなんて嫌に決まっているじゃないですか!!」

 以前志摩子の代わりに二人とデートして以来、その後も何度もデートをしてきた乃梨子は志摩子とは違った特別な想いを二人に抱くようになったのだ。

「うん、よく言えました」
「心配しなくても乃梨子ちゃんの事は捨てたりしないわ。私たちにとって乃梨子ちゃんは大事な、そして特別な子なんだから」
「〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 そして今日もまた二人に良い様に弄ばれながらもそれに喜ぶ自分に僅かの自己嫌悪と幸せを感じる乃梨子であった………









 あ と が き

 どうもこの一年乃梨子がマイブームなコルトです。そんな私の描いたツンデレ………と言うにはまだ物足りない所がありますがツンデレ乃梨子はどうだったでしょうか?乃梨子×○○で誰を入れようかと考えたもののベストカップルはやっぱり志摩子です。なのでそれ以外を入れようとしても私には中々思うように描ききれないのが現状、そこで思いついたのがこの祐巳×乃梨子×由乃の両手の花、そしてツンデレと言うコンセンプトでした。そして結果は妹オーディションで乃梨子が待ったをかけるシーン、これを描けて私の中で一段落付きましたがみなさんはどう思われましたか?
 え?早く連載モノの続きを描けって?それはごもっともな意見です。ですが降り止まぬ雨の第四話で乃梨子の活躍を描いている内にどうしても乃梨子SSが描きたくなって………と、とりあえずこれで一応満足したのでまたそちらの執筆を再開しますね、ハイ(汗








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