「………で、昨日は楽しんできたわけね」
「うん、江利………黄薔薇さまには色々と教えてもらったよ」

 つい二人っきりの時のように名前で言いかけるが慌てて言い直す。だが由乃の関心は別のところにあるのか

「ふ〜ん、色々ね」
「べ、別にそういうことを教えてもらったわけじゃないんだよ」
「そういう事ってどんな事なのかな?祐巳さんが何を考えたのか物凄く興味あるな」
「由乃さんの意地悪」

 ドキッ!!

(私には令ちゃんがいるのよ!私には令ちゃんが………)

 不覚にも祐巳の拗ねた顔にトキめいてしまうが、必死に自制する。

「じょ、冗談よ。祐巳さんが良い反応するからつい………」
「そんな意地悪ばかりしているとその内令さまに愛想尽かされるよ」
「その時は祐巳さんに慰めてもらうからいいもん」
「もう、由乃さんったら………」

 時折見せる祐巳の無防備な可愛さに必死に耐えながらも、由乃は祐巳の良き友人としてお付き合いをしていた。だが、

「祐〜〜〜巳〜〜〜ちゃん!!」
「ぎゃうっ!?」

 突然後ろから抱きしめられ、そのまま頬摺りされてしまう。

「白薔薇さま、突然抱き付くのは止めて下さいって何度も言っているじゃないですか」
「だって祐巳ちゃんの姿が見えたら体がもう言う事きかないんだもん。これはむしろ祐巳ちゃんの所為よ」
「そんな支離滅裂な理由で………」

 だが馬の耳に念仏、糠に釘、暖簾に腕押し………聖にセクハラを止めろと言うのは無理な注文である。ましてやそれが愛しの祐巳が相手となれば尚更である。

「それに祐巳ちゃんったら昨日遊びに行ったのにお出かけ中でさ、骨折り損はいいけど寂しかったな〜」
「ごめんなさい、昨日は黄薔薇さまと………」
「祐巳ちゃん!何度も言っているけど江利子は止めなさい。今でこそ可愛がっていてもいつか令のように捨てられる日が来るんだから!!」

 恋は人を盲目にすると言うが、ここまで人の話しを聞かないと盲目を通り越して暴走である。しかも、

「ごきげんよう、祐巳。タイが乱れてよ」
「ご、ごきげんよう、お姉さま。毎度毎度の事ながら直してもらうのは有り難いのですが何で服まで脱がそうとしているんですか?」

 タイが乱れているならタイを直すだけで事足りるはず、事実つい最近まではそれで通っていた。だがここ最近の祥子は放って置けば裸にしかねない勢いがあるのだ。

「ついでよ、ついで。まぁ敢えて言うなら余計な虫が付かないよう私たちの仲の良さをアピールするという意味もあるわね」
「いくら姉だからってこんな大衆の面前で祐巳ちゃんを裸にしようとするなんて余計な虫はむしろ祥子の事じゃないの?」
「ま、まだ裸にはしてません!」
「じゃあこれから裸にするんだ」
「まぁそれはおいおいとして………」

 結局裸にするんか!?と思わず叫びたくなるが聖同様に祥子も人の話を聞かないクチなので頭が痛いところである。この二人だけで十分過ぎる位頭痛の種なのに。

「朝から二人とも何馬鹿をやっているのよ」
「お姉さま!?」
「蓉子!?」
「同じ薔薇さまとして、そして姉として今の貴女達は見ていて恥ずかしい限りだわ」

 言葉だけを見れば紅薔薇さまとしてちゃんと叱咤しているように見えるだろう。だが

「そう言いながら祐巳の顎を上げて何をしようとしているんですか!!」
「貴女達と違って別にやましい事は考えてないわ。ただお祖母ちゃんとして孫に朝の挨拶を………」
「「どこの世界に孫に熱いベーゼを交わす挨拶があるのよ(というんですか)!!」」

 結局薔薇の館でまともなのは恋人である江利子と友人である由乃とその姉令の三人である。

「毎度毎度の事ながら朝からお疲れ様だね」
「そう思うなら助けてよ」
「馬に蹴られたくないから遠慮するわ。それより三人が馬鹿している内に教室にいきましょう」

 だが教室なら安心かと言えばそうとも言えない。何故なら、

「ごきげんよう、祐巳さん。朝から賑やかだったわね」
「ごきげんよう、志摩子さん。ゴメンね、白薔薇さまのこと………」
「お姉さまが何をしようと祐巳さんが気にすることではないわ。だって祐巳さんは黄薔薇さま一筋なんでしょう?」
「うん、でもみんな何度言っても聞いてくれなくて………」
「その内解ってもらえるわ。祐巳さんの傍は誰が相応しいのかを、ね」
「し、志摩子さん?」

 普段は普通に接してくれる志摩子だが、時折尋常でない眼をするのが一抹の不安である。もしかして志摩子も………何度そう考えては祈るように考え直した事か。せめて同級生だけは普通の友達でいたい、そうあって欲しいというのが本音である。

「江利子、会いたいな………」

 愛しの彼女は入試試験の為今日はお休み、卒業まで残り少ないこの時期だからこそ少しでも多くの時間を共有したいのだ。だが現実は二学年の違いを二人を引き裂いていく。

「せめてリリアンに進学してくれれば………」

 もし祐巳がもっと早くに告白をしていればそれもありえただろう。だが二月の中旬ともなれば優先入学はおろか一般の受験すら間に合わないのだ。だからこの事を誰よりも悔やんでいるのは他でもない江利子自身なのだ。

「祐巳さん、小テストの予習はしなくても大丈夫なの?」
「あ!」

 一時間目の小テストの予習を始めるものの、結局江利子の事が気になってあまり身が入らなかった。


「で、私に相談に来たわけね」
「まぁ祥子さまに相談しようものなら『私が黄薔薇さまを忘れさせてあげるわ』なんて言って押し倒しかねないから賢明よね」
「は、ははは。我が姉ながら面目ないです」

 放課後、祐巳は自分の悩みを相談しに令の元を訪れていた。

「どうあってもお姉さまは後数週間で卒業する、その事は私も寂しく思うわ」
「でも令ちゃんは私がいるから問題ないでしょう」
「ま、まぁ祐巳ちゃんに比べればね」

 令も形は違えど江利子が卒業する事に一抹の不安と寂しさを抱いている。だからこそ祐巳は縋る思いで令に解決策を求めたのだが

「お姉さまが卒業してリリアンを離れるからと言って、祐巳ちゃんと恋人関係を解消するわけではない、そう言っても仕方ないよね」
「はい………」

 以前江利子が聞いた数多の受験先はどれも近場の大学ではない。なので放課後に会うのはまず不可能、その為四月からは日曜か祝日ぐらいしか会う機会がないのだ。

「だったらさ、せめて紅薔薇のつぼみの妹として………ううん、後の紅薔薇さまとして山百合会の仕事を頑張ってみない?」
「でも………」
「祐巳ちゃんにとってお姉さまがいなくなった薔薇の館は寂しさと不安を強く感じる場所になるかもしれない。でも薔薇の館はお姉さまが三年間過ごした場所でもあるのよ」

 同じ場所で同じ時を刻む事が出来ないなら、せめて江利子が過ごしてきた時を同じように過ごしてみてはどうか?令の言葉を反芻させ祐巳は考える。

(どうあっても江利子とは同じ日々を過ごす事は出来なくなる。でも江利子を追いかける事は出来るかもしれない)

「それに少なくともあと一年は私と由乃が祐巳ちゃんが知らないお姉さまの一面を話してあげる事が出来るわ」
「そうね、私たちなら下心無しに祐巳さんの相談に乗れる事が出来る、そう考えたら薔薇の館の日々は黄薔薇さまがいなくてもそれなりに充実した日々になると思わない?」

 例えリリアンに江利子がいなくなっても祐巳は一人ではない、その事にようやく気付かされてしまう。

「ゴメン、私江利子の事で頭が一杯でみんなのこと………」
「いいのよ、誰だって大切な人がいなくなると考えたらそれで頭が一杯になるものよ」
「そうよ、それに祐巳さんはちゃんと気付いてくれた。世界は祐巳さんと黄薔薇さまだけではない、私もいるし令ちゃんもいるって事に」

 そう言って抱きしめてくれる二人の優しさに包まれ、思わず涙ぐんでしまう。

「ありがとう、由乃さん、令さま」

 ドキッ!!×2

((っ!?))

 だがそれはあまりにも反則的な可愛さだった。例え祐巳と江利子に負けないくらいの馬鹿ップルである令と由乃でさえ悩殺されてしまうほどの可愛さなのだ。

「れ、令ちゃん。祐巳さんを安心させるためにも見も心もほぐしてあげる必要があると思うんだけどどうかな?」
「よ、由乃さん?」
「そ、そうね。これは仲間に対しての親切であって浮気心じゃないよね」
「れ、令さままで………」
「そ、そうだよ。うん」
「じゃあ据え膳食わぬは」
「ちょ、ちょっと………
「「女の恥よね!!」」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!」

 結論、祐巳はどこにいても頭痛の種は治らない、むしろ増えていく一方である。

「そ、そんな〜〜〜」












「で、『天然の小悪魔』の続編なのに私の出番はないわけ?」







 あ・と・が・き

 『天然の小悪魔』で祐巳の無防備なまでの魅力に落とされた江利子さまと恋人同士になって本当にハッピーエンドとなるのか?そう思って書き始めた結果、結論として『天然の小悪魔』の祐巳には江利子の有無関係無しに次々篭絡していくのでは?たとえ恋人同士同然の黄薔薇姉妹といえど………
 しかし果たして令の言っていた浮気心じゃないというのは正しいのでしょうか?確かに由乃も公認で、しかも一緒にヤる訳ですが………まぁ二人が良いならそれで良いんでしょう。例え祐巳の気持ちがどうであろうと!(マテ

 さて最後に『天然の小悪魔』の続編や江利子ファンの方のためにもキチンと江×祐SSも考案中なので期待せず待ってて下さい(ヲイ)
 ではでは〜




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