「お姉ちゃん、学校には慣れた?」
「多少は慣れた………と言うより諦めたと言った方がいいかな」

 挨拶の『ごきげんよう』から始まって時代錯誤の制服、上品過ぎる生徒達、姉妹制度………最初は心の中で一々突っ込みを入れてたけど今では殆ど突っ込まなくなっている。

「さしずめお姉ちゃんが目をそむけてあげるから勝手にやってて頂戴、そんなところ?」
「まぁね。人がどんな生き方しようとその人の勝手、ある意味悟りを啓けたかも」

 だがあくまで私には別世界のこととして割り切る術を身に付けただけ。あの輪の中に入ろうとはとても思えないのだ。

「怖いもの見たさで私もリリアン受けてみようかな」
「勘弁して、せめて実家ぐらいノーマルな世界でいさせてよ」
「仏像鑑賞なんて趣味を持った姉を持つ私としてはあまりノーマルとは言い難い家庭だと思うけど」
「それはちょっと言い過ぎじゃないの」

 む、痛い所を突いてくる。確かにあまり普通とは言い難い趣味なのは自覚している。でもだからと言ってノーマルじゃないなんて言い過ぎじゃないかな。

「だってクラスメートにお姉ちゃんの紹介する度にみんな引いているんだよ」
「だったら趣味まで話さなければいいじゃない」
「お姉ちゃんから仏像鑑賞の趣味を取ったら何が残るって言うのよ」
「そ、それは………」

 言われてみると確かに答えに困る。何せお小遣いは趣味に費やしているから服はあまり持っていないし、勉強が出来るというのは相手によっては気分を害する危険がある。

「例えば………ほら、あれがあるじゃない。あれが」
「お姉ちゃん自身ですらパッと思いつかないんだから仏像鑑賞の趣味を話すしかないでしょ」

 い、妹に一本取られるなんて………色んな意味でショックかもしれない。

「あ〜あ、せっかくお姉ちゃんモテモテだったのに奇特な趣味の所為で結局男と縁が無かったのよね」
「大きなお世話よ、それにもし恋人を作るなら一緒にお寺巡りできるよな相手を選ぶよ」
「はぁ、よりにもよって女子高なんて入ったからお姉ちゃんの彼氏いない暦三年分更新するのは確定だね」

 酷い言われようだが別段彼氏が欲しいと思わないのであまり気にしない。私は恋に生きるより趣味に生きるタイプなのだから。

「そういう貴女はどうなのよ、私同様歳の数が彼氏いない暦でしょうが」
「お生憎様、私はお姉ちゃんと違ってちゃんと好きな人にはアプローチしているから記録更新が止まるのは時間の問題です」
「アプローチね、昔から好きな人の前になると何も言えなくなる貴女が一体どんなアプローチをしているのやら」
「そ、それはその内改善すると言う方向で………」
「はいはい、まぁ頑張って頂戴」

 つまりは何も進展していないようね、まぁこの分なら妹に先を越される心配は無さそうね。

「そろそろ宿題しないといけないから今日はこの辺で切るね」
「うん、じゃあまたね」

 最近小生意気になってきた妹との電話を切って一息付く。

「別に彼氏が欲しいとも思わないし、学校でみんなの輪の中に入りたいとは思わない」

 学校はあくまで学び舎、勉学に励むのが本来の姿と割り切っている。だから友達を作ろうと思わないし、クラブ活動なんてもってのほか、三年間勉学に徹するつもりなのだ。

「志摩子さん元気にしているかな」

 友達だと言える相手のいない学園生活の中で唯一気になる相手を思い浮かべる。

「最近はマリア祭の準備で忙しくてあまり会えないからな〜」

 何故こうも彼女のことが気になるのだろう?彼女の秘密を知ってしまったから?それとも自分の趣味を知られてしまったから?否、どれも間違いではないけどあくまで要因の一つに過ぎない。もしかしたら確たる理由は無いのかもしれない。

「でも会ったからって何をしたいのだろう。志摩子さんにはちゃんと秘密は守るって伝えたし………」

 では何故こうも彼女を想うのだろうか?私にとって志摩子さんがどういう存在なのか?ふと母の言葉が脳裏を過ぎる。

『乃梨子、学校はテストの勉強をするための場所じゃないわ。それ以外でももっと学ぶべきことがあるわ、例えば恋とか』
『恋って………勉強から随分外れたことを言うね』

 まさか志摩子さんに恋している?馬鹿馬鹿しい、志摩子さんは女性なのだ。そのような感情なんて持つわけが無い。

「でも着物姿の志摩子さんって綺麗だったな〜」

 髪を一つにまとめ着物に身を包んだ志摩子さんは私と一つしか違わないのにまるで大人の女性のようだった。着物自体は地味だったにも拘らず、地味さを感じさせない魅力があった。

「素材が良ければ何を着ても似合うものなのかもしれないね」

 同じ制服を着ていても未だに私は自分の制服姿に違和感を感じてしまう。

「志摩子さんなら容姿端麗・眉目秀麗なんて美辞が似合うだろうけど、私だと無味乾燥がお似合いだからね。はぁ」
「そうかな?リコは噛めば噛むほど味があると思うけどね」
「す、董子さん、いつ帰ったの!?」
「『志摩子さん元気にしているかな』の辺りだね」

 それって最初からじゃない、帰ってきたんだったら声ぐらいかけてくれればいいのに。

「あ、不満気な顔しないでよ。私はちゃんとただいまって言って帰ったんだから」
「別にいいですけどね」
「それよりその志摩子さんがリコのお姉さまなの?」
「なっ!?」

 何でそこまで話しが飛躍するのだろう。董子さんには志摩子さんのことはまだ話したこと無いのに。

「リコが志摩子って子の事を思い浮かべながら独り言言っている姿を見ていると何だか懐かしくなるよ」
「それってまさか………」
「うん、どう見ても上級生のお姉さまに憧れるリリアンの生徒だったよ」
「そ、そんな………」

 リリアンの生徒たちは私とは別の人種、決してああはならないと思っていたのに………

「そんなショックを受けるようなことかな。むしろそれだけリリアンに馴染んだって事なんだから喜ばしいことじゃない」
「そんなの私のキャラじゃないよ、それに志摩子さんとはそういう関係じゃないんだよ」
「じゃあどういう関係なの?」

 あれ?じゃあ一体どんな関係なんだろう。上級生と下級生と言えばそこまでだろう。だけどそんな言葉で片付けるのは少々雑である。なら友達………これもちょっと違う気がする。じゃあ一体?

「その様子だとまだ答えは出ていないようだね」
「う〜ん、イメージはあるけどそれをどう表現していいのか………」
「じゃあさ、リコはその子の事好き?」
「好き………なのかも」

 なんとなく先ほどの疑問が解った気がする。私は志摩子さんが好きで傍にいたいのだ思う。

「だったらさ、答えが出るまでその志摩子って子の傍にいるといいよ」
「董子さん」
「だって仏頂面のリコがその子の事になると凄く良い顔しているんだからね」

 自分ではよく解らないけどそうなのかな?でも志摩子さんの傍にいるのは嫌いじゃない。多分今一番一緒にいたいと思えるのは志摩子さんなんだと思う。

「まだリコはリリアンに入って間もない、だから時間は一杯ある。だから色んなことを経験しなさい、その志摩子って子と一緒にね」

 だから今は志摩子さんと一緒にいよう、志摩子さんの悩みが解消するまで放って置けないから。

「今度一緒にどこか遊びに行ってみるよ」

















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